北九州のフォルテピアノ工房訪問レポート

 
調律師の梅岡です。
今回は先日北九州のフォルテピアノ工房を訪問いたしましたので御報告させて
いただきます。
長年リュート製作家として活動されていました松尾淳氏がフォルテピアノの
製作と修復に転向されて北九州市八幡に新しい工房を開かれたので早速
訪問してまいりました。
松尾氏はリュートの製作や修理の他にもルネサンスハープからチェンバロ
など鍵盤楽器まで広範囲な楽器を扱われておりましたが、以前より「実は
シューベルトの大ファンなので一番手掛けたい楽器はフォルテピアノ」と
おっしゃっており、密かにオリジナルノ19世紀ピアノの収集も開始されて
おりまして、最近ついにリュートなどの製作は終了して正式にフォルテピアノ
製作修復に専念されるとの事を宣言され、新たに北九州市郊外に広い工房
を開設されました。
移転されたばかりの工房は、10台ものピアノが保管されているスタジオ
の他にも木工作業部屋や膨大な材木の保管部屋などかなり広いスペース
を持つ充実した工房でした。
現在オリジナルの19世紀ピアノを10数台所有されており、ウィーン式の
有名メーカーの銘器や英国式のPleyel(1844年と1851年)などをスタジオに
置かれております。(残念ながら弾ける状態の楽器はまだ少ないようですが)
また20年以上前から新作フォルテピアノの製作も開始されており、今まで
シュタイン、ワルター、ナネッテシュトライヒャ(大阪いずみホール所有
楽器のコピー)なども作られたとの事です。
沢山のオリジナルピアノを横に置いて、各部を実際に見て触って参考に
しながら復元楽器を製作するという理想的な製作環境は日本のフォルテ
ピアノの製作家の中では本当に贅沢なものだと言えるかと思います。
今回の工房訪問は、私がコンサートで提供しているJohann Georg Gröber
 (Insbruck 1820)という6オクターブのオリジナルピアノの中規模な修復調整
お願いするためでしたが、作業の合間に工房にある1810年代のウィーン
式のJacob Bertsche(c1812)(6オクターブ)や2台のPleyel(1844&1851)など
の調律をさせて頂く事が出来ました。
1810年~20年頃のウィーン式ピアノのモデルの変遷は実際音を出して
みると文字での知識以上にそのダイナミックなキャラクターの変化を
感じる事が出来ましたし、僅か7年違いのPleyel2台は年代による構造
や音色の違いよりも修復のポリシーの違いから来るキャラクターの落差
を大いに感じる事が出来ました。後世の現代的な発想での修復を経て
しまえばオリジナルで感じる事が出来る当時の香りが相当希釈されて
しまう事も2台を同時に触る事によって感じる事が出来ました。
しかしオリジナルの第2響板が残っているショパン時代のPleyelを触る事
が出来たのも幸運と言えます。
貴重な19世紀ピアノ陣もお願いすれば比較的気楽に弾かせていただける
ようで日本では大変ありがたい事でありますし、それだけでも北九州まで
訪問する価値はあると思います。
松尾氏に伺いますと、引越したばかりの工房でまだ新作フォルテピアノの
製作を開始するまで少し時間が掛かりそうだとの事ですが、まずは人気
のWalterモデル(1795)の製作から開始する予定だとの事です。
(来年半ばにはそのWalterモデルの音が聴ける予定だとか)
平行してオリジナルピアノの修復もされるとの事で、時間は掛かりそうです
がいずれは19世紀オリジナルピアノの銘器の音色も舞台で味わえるの
ではと期待しております。
ネット上で過去の作品が閲覧出来るようですが、連絡先はもう古いよう
ですね。まだ住所や連絡先などは公開されていないようですが、もし
ご興味ある方は梅岡からご紹介させていただきます。
いずれフォルテピアノ関係者の北九州詣でが流行る時代が来るのでは
と期待しております。
松尾新工房131002 (1)
松尾新工房131002 (3)
松尾新工房131002 (6)

北九州のフォルテピアノ工房訪問レポート」への2件のフィードバック

  1. 大原

    はじめまして。田中と申します。
    音楽関係ではないので、コメントすること少し迷ったのですが・・

    25年くらい前、福岡市早良区の団地で松尾さんの御宅の隣に住んでいて、よく一緒に遊んでもらい、楽器を作るところを見せてもらったり、ピアノを習ったり、すごく可愛がってもらっていました。
    私の娘が今、当時の私と同じくらいの歳になり、最近特によく松尾さんのことを思い出すようになりました。でも、母が他界した今となっては連絡先もわからず、思いつく色々な単語を検索していてこちらのブログに辿りつきました。

    突然コメント欄に失礼をして申し訳ありませんでした。
    もしよかったらメールいただけると嬉しいです。

    返信

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